岩波文庫 32-060-1
「リグ・ヴェーダ讃歌」辻 直四郎 訳
その一(二・二三)
一 もろもろの眷族の長なる汝をわれらは呼ぶ、詩宗の中にありて至上の名声をもつ詩宗、祈禱の最高の王者を、ブラフマナス・パティよ。われらに耳を傾けつつ、[なが]座にすわれ、支援を伴いて。
二 先見の力ある神々すら、祭祀の配分を常に汝より受領せり、アスラの性あるプリハス・パティよ。太陽が光明もてうるわしく暁紅を[生みだす]ごとく、汝はあらゆる祈禱を生みだす者なり。
三 誹謗と暗黒とを払い除きたるのち、汝は光明に満ちたる天則の車に乗る、プリハス・パティよ、恐るべき・敵を滅ぼし・羅刹を殺し・牛の囲いを破り・太陽を見いだす[車に]。
四 汝はいみじき指導もて導き、汝に奉仕する人間を守護す。かかる人に困厄は達せざるべし。汝は焚殺者にして、祈禱を憎む者の悪意を無効になす。プリハス・パティよ、こは汝の卓越せる偉大性なり。