上村一夫「同棲時代」1972年
▶ この有名な曲のテーマが「同棲」だったとは知らなかった。偶然らしい。
広告代理店の宣弘社時代からの阿久悠の盟友の上村一夫の絵は、阿久悠が演歌を作詞する際のイメージの泉のような定礎だったらしいので、八代亜紀も石川さゆりも間接的に上村一夫の恩恵を受けている。
内藤やす子「弟よ」1975年
独り暮しのアパートで/薄い毛布にくるまって/ふと思い出す故郷の/一つ違いの弟を
暗い暗い眼をしてすねていた/弟よ弟よ/
悪くなるのはもうやめて/あなたを捨てたわけじゃない...
同棲ブームからわずか3年程だが、内藤やす子のこの曲の弟は独居生活でグレてしまっているが大ヒットした曲で、平松伸二「ドーベルマン刑事」にも、キャバレーでギターの弾き語りをしている姉と、根はいいやつなのにグレて拳銃自殺する弟のナラティブが引用されている。
内藤やす子「想い出ぼろぼろ」1976年
▶ 統計的なデータと経験則の感覚で、歌謡曲の新譜を購入する年齢は30歳前後で、それ以降の年齢層では急減するらしい。
10歳位からラジオやテレビで歌謡曲に強い興味を持って、自分で働いたお金でレコードを買えるようになるのが20歳前後と仮定しても、売り上げに直結するポップスの新曲の射程は約10年間と意外と短い。
映画「おもひでぽろぽろ」1991年
映画館でこのスタジオジブリの新作を観る前の宣伝で
「なんでジブリが、内藤やす子のあの暗い世界をアニメ化するんだろう」と疑問に思っていたのだが、内容は内藤やす子とまったく関係がない作りだった。
15年の距離を取れば、比較的たやすく古い記憶のレッテル効果を払拭できるということなのかな?
まあ少なくとも「想い出ぼろぼろ」と「おもひでぽろぽろ」がシンクロニシティでほぼ同時にリリースされていたら、僕ならタイトルを変えるだろうけど、ジブリの威光に便乗したり、術式反転でジブリをディスって汚したり、今のSNSや変なネット広告みたいな現象も起こるだろう。
高畑勲はどういう了見でこのタイトルにしたのだろう。