筋を通す

市川沙央(芥川賞作家)

▶ 選考委員会の島田雅彦のコメントで

「なんでも自発的に隷属していく今の日本に、あなたのような作家が出てきた事は喜ばしい」というような事を言ったのは象徴的だった。

柳葉敏郎(映画「螢」)

キネ旬ではないがこれは好きな映画のベストテンに入るもので突っ込みどころ満載なのだが、ボッタクリバーと混ぜ物の洋酒の露店売りでしのぎを立てていた柳葉敏郎と舎弟の布施博のもとに、二人が昔所属していた任侠団体の兄貴分の峰岸徹が親分風を吹かせてやってくる。

話を聞いてビビった布施博

「お、俺達、殺しはやりませんよ」という。

ギバちゃんは冷静にため息をつきながら

「◯◯さん。俺達はもうあんたとは関係ないんだ。正直に言ったらどうですか。メンツ潰されて組が崖っぷちなんでしょう。だったらそれなりの仁義の切り方と頼み方があるじゃねっすか」

相手を睨んで。

峰岸徹の態度が変わる。

「実はそうなんだよ。お前さんを見込んで、なんとかひと肌脱いじゃくれねえかな。頼むよ。お願いします。」

「2.000万円。キャッシュっすよ。」

と、二人は鉄砲玉のウェットワークを引き受けてしまい、一線を越えて逮捕されて観覧車の夢ばかり見るようになってしまったのだが、同じ結果を引き起こすとしても「筋を通す」という美徳が欠けてる気がするね。最近は。

理屈は百出するけど。