この小説に登場する「クン・マニア」の「マニア」とは「躁病」の事。躁病のクンというニックネームなんだね。
世の中に出版されている本で、双極性障害の鬱病を扱っている物は星の数ほどあるし、池澤夏樹は15年前程の文学賞の応募作にあまりにもうつ病物が多いので「まるで日本中がうつ病になったみたいな感じだ」とコメントしていた。
ところが「躁病や離人症」を扱った本は少ない。あっても短文で物足りない。上記のクン・マニアの長台詞はそこを満たしてくれる珍しい逸品。
「オタク」「マニア」「コレクター」を混同する人がいるけどそれは違う。パラノイアと躁病は別の症状だし、仕事で認知症や精神疾患の研修に出ると「病名を勝手につけて生兵法をしないように」と講師に釘をさされる。
電車の中で人目があるのにスマホを凝視してニヤニヤしていたり、森喜朗が「女は話しが長い」と言ったような「話し出すと止まらない。特に酒に酔うと」という状態は躁病なのかというとそうではないが「依存症」の入口ではある。それをこじらすと自律神経失調症や生活習慣病、色情狂やストーカー(危険な領域の人)等になる事があるのでご注意を。
躁病の有名なエピソードは、駅で電車を待っていたら突然線路に飛び降りた男にびっくりした駅員が緊急停止ボタンを押して「自殺しちゃダメじゃないか!」と怒鳴ったら「自殺じゃない!俺は電車を止めようとしたんだ。」というスーパーマン妄想があるけど、こういうのは細分化すると世間に山のようにあって「病気じゃなくて、性格じゃないですか?」とモザイクをかける事はよくある。狂人のレッテルを貼られると差別されるからね。
「器官なき身体」とはドゥルーズ=ガタリの造語。フェリックス・ガタリは精神科医。