真理子は悪くない

中島みゆき「悪女」1981年

▶ 介護業界に限らず個人情報漏洩にはどこも神経を尖らせる時代だが、CM交流会の事例検討等では「個人が特定できる部分はPaint it black(黒く塗りつぶす)する」ことになっている。

1980年代は携帯電話もネットもなかったし、今ほど窮屈ではなかったが、歌詞のしょっぱなに「真理子の部屋に電話をかけて男と遊んでるふりをしてました」とこの人が言うと「真理子=悪女」という女のプロパガンダの印象操作の反動でみゆきの株が上がるという、高度な推理小説のテクニックが織り込まれていた。

父親が三島由紀夫の担当編集者だった坂本龍一は、その微かな倍音を察知していたのかもしれない。

当時はまだリゲインや根性野球の時代で、伊集院大門(アストロ球団)がバロン森に「汗は男の勲章だ!」とどなり散らしたように「手に汗握る」とか「汗水垂らして働く」という言葉は肯定的な良い意味だったが、中島みゆきは女性なので

▶ 教授に「彼女、汗をかきすぎなんだよね」と言われたら、セクハラで裁判沙汰になるかもしれないのが2023年地球沸騰の夏である。

▶ 若者が昭和歌謡の空気を求めているのは、もっとおおらかに行きたい気持ちもあるんだと思う。