批評の処世術/テンションコード。あれはコレだな。

糸井重里(コピーライター)

村上龍坂本龍一がホストでゲストと三者対談をする「EV  Cafe」

▶ 政治もそうだけど、職業として学問や表現で生計を立てている人は、評価や批判で攻撃的な言葉を使うことに自ら抑圧をかけている。だけどちゃんと批判をしないと世の中は腐ってしまう。

だからレジエンスの底を破らずに創作意欲(ストレングス)を引き出す「センス」が仕事の生命線でもあるのだが、藝大出身の教授が専門用語を散りばめるのではなく

村上「中島みゆきは詞がいいよね」

坂本「そう?ぼく中島みゆき嫌いなんだよね」

村上「え!どうして、そんな...」

坂本「汗をかきすぎじゃない。彼女」

村上「う〜ん...スーパー坂本スター龍一に言われると、俺もそういう気がしてくるかも」

と。▶ 「嫌い」という感情的な言葉を使いこなせる人は少ない。ところが久しぶりに若者が

YOASOBI「夜に駆ける」

♪君にしか見えない/何かを見つめる目が嫌いだ/見とれているような/恋するような/そんな顔が/嫌いだ...

▶ 切断する子がいるんだ。と感心した。

定期購読するサンデー毎日

これといくつかの連載を読みたいからなのだけど、高橋先生は明治学院大学で文学の教授をやっているのもあり「先祖返りのベクトル。ルーツ探し」に陥るのではと警戒しているのだけど、やはりこの人は上手い。

▶ 先人を褒めるよりも、たとえ断片でも偶然でも、拾った側を応援するベクトルを期待してしまう。

山下洋輔の「ピアニストを笑えシリーズ」

タモリ筒井康隆錚々たるメンバーとつるんでこの人達がやっていた事は破天荒に面白いんだけど、ユニットの構成としては

A.ウォーホールのファクトリーの、イーディー・セジウィックヴェルヴェット・アンダーグラウンドNICOみたいなモード系の女性がいないんだよね。僕が知らないだけかもしれないけど。

実力満点なのに。

山下洋輔は国立音大の作曲科出身で「自称:ベト狂(ベートーベンの研究者)」だったので、ドビュッシー等のタイプの坂本龍一とガチンコで討論したら「南斗虎破龍VS北斗龍撃虎」みたいに大変な事になったかもしれないけど、遺作の一部の「音楽と生命」で

「じっくり分析すると、楽聖ベートーベンも、やや大きめの音のブロックを積み上げる手法で作曲していることがわかる」と、長年秘めていた「ジャジャジャジャーン!(交響曲5番)は、ダサいかもしれない」という胸のつかえが取れた。交響曲7番は映画の影響で大好きだけど。

▶ 上記のような「汗のかきすぎ」や「大きめのブロック」などの「テンションコードの言葉」を持っているのは、「必要な風刺の鋭さを保ちながら、誰からも嫌われない稀有な言語能力」だと思いますけどね。

▶ その拡散した断片は、漂流しながら、今度は誰に宿るのだろう。

沢田研二「時の過ぎゆくままに」

エリクソン発達心理学

▶ チャットGPTは無断でブイブイやってるうちに、合法での非合法でも、枯れていくと思うけどね。

もうどうでもいいけど。