BON CHIC「Cool temptation」
学生時代はバンドを組んでライブやコンテストに出まくっていた。ある日の対バンは上記のBON CHICだった。若いというのはすぐに仲良くなる特権があるが、ここのキーボードは、小室哲哉のなんちゃってポップスと違って、筋の通ったセンスの良さがあり、ウチの鍵盤も評価が高かったが彼らのサウンドを聴いた一瞬で表情が変わり「どうしたのさ?」と尋ねると、「自分と同じルーツを感じる」と呟いていた。
僕はといえば、ボーカルの歌いまわしと面影が秘めた想いで推していた畑中葉子に似ていたので、ツンデレの近寄りがたいバリアを張っていたが、メンバー数人で互いの演奏後に会いに行ったので難なく雑談ができた。
キーボード同士は北斗の拳のワンシーンのように無言で対峙して
「教授?」
「うん」
これだけでディープ・コミュニケーションが成立していた。
このバンドで一番好きなのは「エマージェンシー」という曲なのだが、メジャーではリリースしなかったのかな。
ダンスの膝の角度やポーズの決め方などは1980年代の歌謡シーンのガンプラみたいに空気が投影されていたけど、さほど売れなかったのでよほどのマニアでなければ知らないんじゃないかな。
「売れる芸能人」っていうのは、方程式で計算できないアレを持っている。カネをかけたプロモーションで売ったアーティストのサウンドは僕らにとってはすぐに飽きるしつまらない。
チャットGPTみたいにね。