エントロピーの送り場所(捨て場所)

作:光瀬龍、画:萩尾望都百億の昼と千億の夜」1977年

しばらく前に書いた「ディラックの海」は少年チャンピオン連載のこの漫画で知った。

ポール・ディラックの本

帝釈天の印で放たれる五条悟の無下限呪術の「無量空処」は「空」というより「エントロピーの飽和」による対象の運動停止のようだから、この概念が近いかもしれない。

Wikipedia引用 ①)

ディラックの海とは:
相対論的量子力学において、ディラックの海(英: Dirac sea)とは、真空状態が負のエネルギーを持つ電子によって完全に占められている状態であるというモデル。

ディラック方程式の解が、負のエネルギー状態を持つことによって生じる問題を回避すべく、英国の物理学者ポール・ディラックが空孔理論の中で提唱した。

ディラックは、電子が満たす相対論的な量子力学の基礎方程式として、ディラック方程式を導いたが、この方程式は負のエネルギーの解を持つ。

五条悟(呪術廻戦)

Wikipedia

この負のエネルギーに下限はなく、電子はよりエネルギーが低い状態に落ち込んでいくため、安定な状態をとりえない。

すなわち、エネルギーの基底状態となる安定な真空状態が存在しないことになる。

こうした問題を解決すべく、ディラックは真空状態はすべての負のエネルギー状態が電子によって、埋め尽くされた状態とするディラックの海の概念を提唱した。

パウリの排他律によれば、既に占有されている負のエネルギー状態に電子が入ることはできず、すべての負のエネルギー状態が埋まっているディラックの海では、より低いエネルギー状態に落ち込むことはない。

福岡伸一生物と無生物のあいだ

ハカセ福岡伸一)の「動的平衡理論」によれば、「生物は代謝によってエントロピーを常に捨てながら生きている」のだが、「ディラックの海」は「エントロピーの捨て場所に困らない」。言葉を変えれば「エントロピーの受け皿が無限にある」状態だと当座は認識した。間違っていても動いているうちに成仏するだろう。

▶ 前述の「貨幣の死蔵」からの派生でもあるが、僕がずっと「生成AIに対して強く批判」しているのは、「物凄い速度で経済と文化のエントロピーの模倣子が飽和・充満すると死ぬぞ(無生物になるぞ)。」という危機感による。

なので、グーグルが格下のYahooに長年経済的虐待を行っているニュースを見たので調べてみた。

Wikipedia 引用 ①

独占禁止法。または競争法とは:

資本主義の市場経済において、健全で公正な競争状態を維持するために独占的、協調的、あるいは競争方法として不公正な行動を防ぐことを目的とする法令の総称ないし法分野である。

独占禁止法」といった場合、日本における私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の略称と紛らわしいため、
区別を明確にする際には「競争法」との呼称が用いられることがある。略称は「独禁法」。

肺のガス交換

Wikipedia

「競争法」と言った場合、
独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)のほか、不正競争防止法景品表示法や下請法なども含む。

また、「競争法」は
「反競争性をもたらす行為を禁止するという観点から、あらゆる商品役務に適用される法令」とも定義され、この場合は民法、知的財産法や各種事業法なども含む。

現在では経済法の中心的位置を占めると考えられている。

キング・クリムゾンクリムゾン・キングの宮殿

Wikipedia

独禁法制定の歴史的経緯と他の産業財産権法との関係

特許法著作権法等といった、独占禁止法の趣旨と一見相容れないようにも見える知的財産法も存在する。

これらの趣旨はあくまで発明その他の創作活動へのインセンティブを図ることで社会全体の産業活性化を図るために、
限られた期間創作者への、一定の情報の独占権を付与するものである。

一本の鉛筆(毎日新聞

Wikipedia

歴史的にはイギリスの産業革命によって、中小事業者による独創的な発明を、

大資本家による模倣から守る社会的必要性が生じたことにより、近代先進国家にて順次制定された。

独占禁止法の概要

Wikipedia

アメリカ合衆国では、この特許制度を利用してトーマス・エジソンは発明王として大成功を収めた。

しかし、創作者への保護を手厚くするプロパテント政策により、権利の制約を受ける第三者の不利益が過大となり、
世界恐慌の間接的原因の一因ともいわれ、1930年代のアメリカでは、創作者への保護よりも権利の制約を受ける第三者への保護を手厚くするアンチパテント政策を導入するとともに、
市場独占による取引の停滞を解消するべく、独占禁止法を初めて制定した経緯がある。

廃用症候群のゲイラ(北斗の拳

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そのため、独禁法の運用にあたっては、特許権著作権等の独占権による創作インセンティブを刺激するというメリットと、
権利の制約を受ける(第三者への)デメリットを比較考量して、
あくまでも社会全体の産業活性化の観点から行わなければならない。

神谷美恵子

▶ 生成AIの無断の模倣による「生き甲斐の略奪」

Wikipedia

したがって、知的財産権の正当な行使である限りは独占禁止法の適用は受けないものの、

知的財産権の趣旨を逸脱する濫用(英:Patent misuse)は独占禁止法によって禁止され得る。

たとえば、特許権者による独占実施、または限られたライセンス者との寡占実施にあって、価格カルテルやライセンス期間中の改良研究禁止、
ライセンス期間満了後の当業参入禁止などは、公正な競争を妨げるものであり、
各種の知的財産法による権利保護範囲を逸脱する行為として独占禁止法によって禁止され得る。

島田雅彦「悪貨」

文壇の貴公子:島田雅彦のこの本によると

「酒池肉林というのは意外とお金がかからない。1億円もあればお釣りがくる。そしてこれも飽きる。」とある。

グーグルやアップルの百折不撓の理想なんてその程度かとがっかりした。

既に無生物になってるんじゃないの?

虎杖悠仁と宿儺(呪術廻戦)

土門剛介(ドカベン