④ 温新知古 Ⅳ/地域密着型広告に見る、法と環境。競争節度とお店の存続

牛乳石鹸京阪電鉄と京都浴場組合のタイアップ広告。

▶ これはいい香りがしますね。日本の銭湯は「テルマエ・ロマエ」(ヤマザキマリ)を読めばわかるように、人が沢山集まる場所で、浴場広告は広告媒体のメインフィールドだった。

銭湯の壁面の絵師

▶ 例えばこういう具合に、一日の疲れを癒やしに来るお客さんの気分を害さないように帆掛け船を浮かべてさりげなく「羽二重団子」と帆に書くとか、入浴環境との調和を重視する恥の概念と節度があったし

かぐや姫神田川」のようなナラティブやインスピレーションも豊富だった。

薬事法で半径が一定距離内に新規の銭湯を建ててはいけないのは、競争原理によって風呂釜や床の洗剤をケチったり、掃除の回数を減らしたりすると不衛生で公共の福祉やサービスの安全性を欠くおそれがあるから。

食い物でも、あまりに安い商品は何が入ってるかわからないから用心するでしょう。

▶ ところが「ドカベン プロ野球編」で山田太郎西武ライオンズに入団して1億円プレーヤーになったのに、住んでいる長屋に個浴を作っただけという、水島新司のメッセージにもあるように、三種の神器のテレビ・冷蔵庫・洗濯機だけでなく「自宅の風呂場」がまるでインターネットのように急速に普及した。

その結果、地域密着型の小さい銭湯は衰退、廃業が相次ぎ、残ったのは大店法の歴史で商店街が消えていくのと同じように

スーパー銭湯のような大型でレジャー性のある店舗か、または

ネットカフェのシャワールーム等の狭い個室か、安近短の家族のおでかけで、地域密着型の「対話」「裸のつきあい」が激減し、あろうことか記号接地もできないチャットGPTとの「虚無の対話ごっこ」で燥いでいる状況だもんな。

「会社が潰れたら給料も払えないだろ」は経営者寄りのアルゴリズムの人の常套句だけどね。

ボタンの掛け違え

塩野七生に笑われちゃうぜ。